PJニュース

Updated: Jun 30 21:24    

HOME > (56) > 「正直者がバカを見る」定期購読やめた...

PJ: 小田 光康

「正直者がバカを見る」定期購読やめたら、日経本社から調査員が来た
2009年09月09日 08:07 JST


日経新聞本紙よりも内容が充実しているネット証券サイトの日経テレコン 

【PJニュース 2009年9月9日】8月いっぱいで日本経済新聞の定期購読するのをやめた。すると本社から調査員が自宅に尋ねてきた。購読中止の理由が聞きたいのだという。最初は耳を疑った。販売店の店長かと思いきや、わざわざ本社から調査のために人を派遣してきたのだから。それだけ、購読中止は深刻な事態なのだろう。

私はネットでの記事有料閲覧化の賛成論者である。現状では、オカネを払って記事を読んでいる新聞の定期購読者が、ネットで記事を無料閲覧させているようなものだ。正直者がバカを見るような状況なのだ。しかも日経の場合、利用しているネット証券のサイトで、特ダネを含めた日経の記事すべてが新聞よりも早い時間に読めるうえ、日経クィックの速報や日経ヴェリタスの解説記事、そして日経関連紙の過去記事まで閲覧できる。

私はすずめの涙ほどの金利も付かない銀行での定期預金をやめ、国債などの「安全資産」やETFといった比較的価格変動リスクが低い金融商品を貯金箱代わりに使っている。ちなみに、定期預金などの金利は、国債などの運用で得た金利から金融機関の手数料を差し引いた額なので、ならば国債を直接買った方がいい。

小泉・竹中政権での「ゼロ金利政策」のおかげで、なけなしのカネを貯(た)める側が犠牲となり、一夜にして長者になったカネを使う側が狂ったビジネスを展開することになってしまった。これが「ITバブル」である。銀行・郵便局の預金者の犠牲のもとで、ポータルサイトなどを運営するIT企業にカネがじゃぶじゃぶと流れ込み、記事の無料化が実現したわけだ。アリのようにこつこつと貯金をする国民を、国はあまりに小バカにしているではないか。銀行・郵便預金をやめるのは国への反抗という意味もある。

私は以上のような説明と共に「正直者がバカを見るのが新聞の定期購読であり、ネット上での記事無料閲覧に反対しているから」と調査員に話した。すると、調査員が尋ねてきた。「どうしたら、また日経を再購読してもらえますか」。私は「ネットでの記事の無料閲覧は廃止してください。一方で、新聞の定期購読読者には、ネットでもすべての記事を閲覧できるようにしたらどうでしょうか」と答えた。

ネットでは広告収入で無料での記事閲覧のコストをまかなっている、ネットでの記事閲覧は常識などとウソをいう自称「ジャーナリスト」の佐々木俊尚氏などがいるが、とんでもない。取材や編集といった記事作成のコストはこれに含まれていない。経済学で言えば「限界費用」だけを見ているのである。いや限界費用ですらみていないのが現状だ。これは短期的にはビジネスとして成り立つものの、長期的に見れば必ず破たんする。記事取材編集のフルコストまでをネット事業に案分しなければ、新聞社の経営は早晩行き詰まる。

ちなみに、ライブドアのニュース事業などお荷物事業、収益を生み出す見込みの少ないコストセンターなのである。関係者は「一月に一人30円でも払ってもらえれば、記事の無料配信をなんとかやっていけるのでは」とこぼしていた。それほど、記事への課金が難しく、ニュース事業は消耗戦を強いられているということなのだ。だからといって、それをしないでビジネスを続けていくにはどだい無理がある。結果として、ヤフーやグーグルといった巨大サイトにニュース閲覧が集約されてしまう危険性がある。つまり、ネット界でもジャーナリズムが衰退し、強いては言論の多様性が失われていくのが目に見えているのだ。

日経新聞は新聞社の中でも記事の差別化が進んだ勝ち組とされる。だが、その日経でさえ収益力が低下している。9月1日に発表した09年6月期中間連結決算では、広告収入の落ち込みなどが響き、本業のもうけを示す営業損益が8億円の赤字となった。前年同期130億円の黒字からの転落であった。売上高は前年同期比14.7%減の1586億円、純損益は前年同期59億円の黒字から55億円の赤字にまで落ち込んだ。

朝日新聞や読売新聞といった全国紙は記事の差別化がしにくく、景品などの有無などで他紙への乗り換えをする読者が多い。これに比べ、日経新聞は経済を専門的に扱い、なおかつ全国紙並みに一般記事も掲載する。しかも、日経記事が商談で利用されることも頻繁にある。このため、日経には継続的に定期購読をするロイヤルティーが高い読者が多いのが特徴だ。だから、日経本社は購読中止の理由を調査したかったのだろう。

佐々木氏は自著で日経の有料記事検索情報サイトを無料で閲覧する「裏口」手法を伝授するような輩だ。ネット証券に登録するだけで、金融商品の取引もせずに本来有料な記事だけタダで利用し、自身はこれでひと月7-8万円の「コスト削減」になったと自慢するありさまだ。このことを調査員に話すと「困るんですよね、有料記事を盗むような人がいると。有料化ができなくなってしまいますから。こういうこともあって、ネット証券での記事閲覧を制限したり、廃止したりする傾向にあります」と答えた。

事実、佐々木氏が「裏口」を紹介していたネット証券、野村ホームトレードのサイトでは、日経テレコンの無料閲覧が先日、取りやめになった。佐々木氏のような有料記事のフリーライダーが新聞社の収益を悪化させているということだ。

日経関係者によると、日経新聞はネットでの記事の閲覧度合いを3段階に分けて、有料化を進めていく方針だ。ネット記事有料化賛成論者の私はこれを見守っていきたい。結果的に「正直者がバカを見る」新聞の定期購読という状況が無くなれば、また日経新聞を取りたいと思っている。【了】

■関連情報
PJニュースは一般市民からパブリック・ジャーナリスト(PJ:市民記者)を募り、市民主体型のジャーナリズムを目指すパブリック・メディアです。身近な話題から政治論議までニュースやオピニオンを幅広く提供しています。

PJ募集中!みなさんもPJに登録して身の丈にあったニュースや多くの人に伝えたいオピニオンをパブリックに伝えてみませんか。



関連記事:
タグ:
pagetop

PJ 記者