PJ: 大谷 憲史
発祥の地で64年ぶりに落下傘が舞い降りた
2009年09月22日 06:28 JST
降下した3人の空挺隊員の中に宮崎県出身者もいた(撮影:大谷憲史、9月20日) 
【PJニュース 2009年9月22日】9月20日、宮崎県川南(かわみなみ)町で開かれた「第3回川南合衆国フロンティアデー ウェスタンカーニバル」(フロンティアデー実行委員会主催)で、陸上自衛隊習志野駐屯地第1空挺団(千葉県)が空挺傘による降下訓練を披露した。
太平洋戦争中、同町には旧陸軍の落下傘部隊があり、「空挺落下傘部隊発祥の地」とされている。発祥の地の記念碑がある川南護国神社では、毎年11月、慰霊祭を開き亡くなった隊員の冥福を祈っている。今回、フロンティアデー実行委が慰霊祭に参加した自衛隊関係者に申し入れ、64年ぶりに発祥の地で落下傘が舞い降りることとなった。
1940(昭和15)年12月、陸軍落下傘部隊の母隊である「挺進練習部」が横浜飛行学校内に創設された。その後、熊谷陸軍飛行学校(埼玉県熊谷市、現航空自衛隊熊谷基地)の分校であった白城子飛行学校内に移り、次いで宮崎県新富(しんとみ)町新田原(にゅうたばる、現航空自衛隊新田原基地)に移った。翌41(昭和16)年9月に、陸軍総監隷下の陸軍挺進練習部として独立し、南方戦線での奇襲作戦に備え、陸軍空挺落下傘部隊となり、43(昭和18)年に新田原から宮崎県川南町唐瀬原(からせばる)に移転した。
陸軍空挺落下傘部隊の駐屯地には支援部隊や通信部隊などもあり、数万人の兵士たちが陸軍最強の訓練をしていた。多くの成果を上げたと言われているが、戦況の悪化により、1万2000人あまりが戦死した。
川南護国神社では、毎年11月23日に「川南町戦没者慰霊祭」(川南護国神社奉賛会主催)が行われている。その慰霊祭でフロンティアデー実行委が、慰霊祭に参加した自衛隊関係者に落下傘の降下訓練実施を申し入れていた。
川南町は宮崎市から国道10号を北上すること約1時間、日向灘(ひゅうがなだ)に面し、宮崎県のほぼ中央に位置する。今年1月1日現在の人口は、1万7053 人である(川南町役場HPより)。
川南町、青森県十和田市、福島県矢吹町(やぶきまち)は、旧軍用地の開放によって行われた戦後の国営開墾事業で、その規模が大きく技術的な困難を克服して成功を収めた地域ということで「日本三大開拓地」と呼ばれている。
川南町には全国各地から農業を志す人々が集まり、いつしか「川南合衆国」と呼ばれるようになった。
畜産を中心に全国でも有数の農業生産量を誇っている。川南町は先人たちのたくましい開拓精神を思い起こし、さらに発展するために「ニューフロンティア精神の町づくり」をめざしている。このことを記念して、07年から「川南合衆国フロンティアデー ウェスタンカーニバル」が始まった。
そのオープニングセレモニーの一部として、陸上自衛隊習志野駐屯地の第1空挺団による落下傘降下訓練が行われ、64年ぶりに川南町に落下傘が舞い降りることになったのである。
降下訓練を行う陸上自衛隊第1空挺団(千葉県、習志野駐屯地)は、58(昭和33)年6月に創設された陸上自衛隊唯一の空挺部隊である。07(平成19)年3月、テロなどの周辺事態に対応するために、これまでの東部方面隊隷下から中央即応集団隷下に編成替えとなった。
その第1空挺団の3人の空挺隊員を乗せたCH-47輸送ヘリが、午後1時にウェスタンカーニバルの会場となっている川南町運動公園陸上競技場の上空約1800mにさしかかった。3人の隊員が次々と降下を開始した。
今回は、「自由降下傘MC-4」というパラグライダータイプのものを使用した。通常の空挺傘(いわゆる落下傘)に比べ精密な降下が可能で、駐屯地イベントの訓練展示やアトラクションなどでよく使用されている。
私はカメラとビデオカメラの両方で交互に撮影をしていたので、詳しい時間は分からないが、数分後、3人の隊員たちは華麗に着地した。
昔の落下傘ではなく、イベント用の自由降下傘ではあったが、この様子を感慨深げに眺めている高齢者も多かった。
この降下訓練に関して、地元川南町の共産党町議は、開拓の日(フロンティアデー)のお祭りにはふさわしくないとして、川南町に対して抗議を行っている。
確かにこのようなイベントが毎年行われるのであればフロンティアでーの趣旨に反するだろうが、空挺落下傘部隊発祥の地で64年ぶりに実現したイベントである。
川南町には開拓の歴史があると同時に、日本人が忘れてはならない戦争の歴史もあるのだ。川南町にいたるところで、空挺落下傘部隊に関する戦跡を目にすることができる。それらに目をむけ、戦争と平和について考えることも大切ではないだろうか。【了】
■関連情報
【YouTube動画】発祥の地で64年ぶりに落下傘が舞い降りた
PJニュースは一般市民からパブリック・ジャーナリスト(PJ:市民記者)を募り、市民主体型のジャーナリズムを目指すパブリック・メディアです。身近な話題から政治論議までニュースやオピニオンを幅広く提供しています。
PJ募集中!みなさんもPJに登録して身の丈にあったニュースや多くの人に伝えたいオピニオンをパブリックに伝えてみませんか。

