PJ: 大谷 憲史
鳩山首相の言う「事業仕分け」とは
2009年10月20日 07:42 JST

東国原英夫宮崎県知事(右下)へ最終提言を行う事業仕分け委員会(宮崎県庁知事室、07年11月13日) 
【PJニュース 2009年10月20日】概算要求の総額が95兆円となると伝えられているなか、鳩山由紀夫首相は10月16日午後、官邸での記者会見で「この額からさらに事業仕分けなどを行って、削れるものは削る」と述べた。この「事業仕分け」とは、いったいどのようなものなのだろうか。
2007(平成19)年8月、東国原英夫宮崎県知事の就任から半年後、知事の私的諮問機関という位置付けで事業仕分け委員会が始まった。私も事業仕分け委員の一人として、参加させていただいた。
この事業仕分け委員会は、第1班「地域生活、福祉保健等」部門、第2班「商工観光労働、教育等」部門、第3班「環境森林、農政水産」部門の3班に分かれ、私が所属していた第1班では、担当課から提出された70の事業について、10月までの約2ヶ月間で事業を仕分けした。
この事業仕分けは、構想日本(東京都、加藤秀樹代表)の発案で約7年前から始められた。国や地方自治体が行っている行政サービスのそもそもの必要性や実施主体(国・県・市町村)について、その事業が「必要」なのか、「不要」なのか、必要であれば、「民間」が行うのか、「市町村」が行うのか、「都道府県」が行うのか、「国」が行うのかと分けていく作業である。
官か民か、国か地方かを仕分ける前に、その事業は必要なのかについて議論することと、県職員ではない外部の者が参加し、公開の場で議論することが大きな特色となっている。
各担当課が作成した「事業仕分け調書」は会議の1週間ほど前に、各事業仕分け委員に届けられた。第1回の会議で審議する24の事業について、前もって自分なりの考えをまとめることになっていたが、この事業仕分け調書がかなりアバウトなのである。
県職員からすれば、もしかするとこれまで継続して行ってきた事業が、この事業仕分け委員会で「はい、この事業は不要」となってしまう可能性が十分にあるのだが、手元にある24の事業の調書からは県職員の熱意が伝わってこなかった。
初めて行う事業仕分けということで、県職員も戸惑っていたことは調書からも分かった。ほとんどの調書には、事業の裏付けとなる予算、事業の実績などの数値が書かれておらず、「〜が考えられる」「〜を行っていく必要がある」「〜が可能となる」といった作文で埋め尽くされていた。確かに文章で示すことも大切だが、それらの事業を通してどのような効果を得たのか、いわゆる「費用対効果」に関する記述は少なかったのである。
第1回の第1班での会議には、私を含めた県民からの公募委員が3人と大学関係者4人の7人。事業を説明する県からは、担当課から課長以下の関係職員3名が出席した。
事業仕分けの流れは以下の通りである。
1 事業の趣旨、内容、効果等を担当課の職員が委員へ説明
2 委員と担当職員との意見交換
3 各委員による「事業仕分けチェックシート」(調書)への記入
4 調書結果を挙手により確認し、同数の場合は班長の意見により決定
多数決を導入しているが、多数決の結果が「不要」でも、7対0の場合と4対3ではその意味合いは違う。このばらつきにこそ意味があるという構想日本の基本的な考え方をもとにしている。
第1号の審議事業は、「障がい者住宅改造等助成事業」であった。私が事前に考えていたことは、他の委員も同じだったようで、担当課に対して質問が相次いだ。それは、事業の具体的な数字についてである。
・この事業はいつから行われ、予算はどう推移しているのか。
・昨年度の住宅改造等助成事業として、何件助成したのか。
具体的な数字が書かれていないと事業を仕分けることが難しい。また、担当職員から具体的な説明を受けるも、その後の審議に時間がかかりすぎた。当初、1事業について20分の予定が大幅に延び、1時間経っても2つの事業しか進まなかった。
「献血奨励品事業」での意見交換のときであった。年々献血協力者が減少しているため、平成4年度から、献血への啓発と感謝の意を込めて奨励品として、歯磨き粉を献血者に提供しているとのことであった。
ここで各委員から出された意見は、この奨励品のことではなく、献血事業そのものについてであった。宮崎県では、献血計画に従い、4台の献血車を使って血液の確保に努めているが、このような出張献血に関する事業費はどうなっているのか、ということである。
担当課からの説明では、献血事業ではトータルで650万円ほどの予算を組んでおり、献血奨励品事業はその一部であるとのこと。県としては、長年、歯磨き粉を奨励品としていたが、果たしてこれでいいのだろうかということで、今回、この事業仕分けに調書を提出した。
献血奨励品という事業の一部を見ても、県の政策としての献血事業の全体像が資料には示されていないと、審議は前に進まない。
初めての事業仕分け委員会で、企画した財政課も会議の進め方を一部見直し、午後からは審議のペースが速くなったが、それでも予定された24すべての事業を消化することはできなかった。すでに10月までの事業仕分け委員会の日程が組まれており、当然、そのしわ寄せは事業仕分け委員にも及び、かなりハードな会議になっていった。
その後、事業仕分け委員会で決定したことは、「最終提言」としてまとめられ、今後の県の予算編成に生かされることとなった。
宮崎県が進めている行財政改革のために取り入れられた事業仕分け委員会だが、単に事業を仕分けるだけではなく、私たち県民が仕分け委員として担当職員と審議してきたことで、県の仕事を垣間見ることができたのは、とても勉強になった。しかも、事業仕分け委員会の全体会及び班別会議は公開制をとったため、多くの県民が県政に関心をもつきっかけにもなった。
しかし残念なことに、その後、宮崎県ではこの事業仕分け委員会は行われていない。
政府が行おうとしている「事業仕分け」は、概算要求の総額95兆円から3兆円ほどの事業費を削り、来年度の予算に反映させようとするものだ。
公開制を特色としている事業仕分けをきっちりと行うのであれば、その過程は国民に明らかにするべきである。外務省を皮切りに、記者クラブが徐々に解放されつつあるが、この事業仕分けについても広く公開していただきたい。【了】
■関連情報
○構想日本
○宮崎県事業仕分け委員会「最終提言」
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