PJ: 大谷 憲史
貴重な「ユメゴンドウ」の骨格の掘り上げ=宮崎
2009年11月16日 08:40 JST

ユメゴンドウの骨格の掘り上げに約40人が参加した(宮崎市加江田川河口右岸、撮影:大谷憲史、11月15日) 
【PJニュース 2009年11月16日】11月15日、宮崎市青島のこどもの国北側の加江田(かえだ)川河口右岸で、ユメゴンドウの骨格の掘り上げの見学と学習会(主催:NPO法人宮崎くじら研究会、協力:宮崎県総合博物館)が行われた。
2007(平成19)年7月8日午後6時ごろ、宮崎市青島のこどもの国北側の浜に、体長2.3メートルのクジラ1頭が漂着(ストランディング)した。日没が迫っていたことから、写真撮影及び計測後、漂着現場近くに埋設された。翌日の7月9日午前8時ごろにもユメゴンドウが漂着し、こちらはまだ新鮮であったことから、宮崎大学農学部獣医学科解剖室に運び込まれて剖検された。漂着の原因は特定出来なかったが、その後、骨格標本として宮崎県総合博物館に収蔵されている。
ストランディングとは、「海(または水)の中にあるべきものが岸などにのり上げる」という意味の動詞であるストランド(strand)に由来する。哺乳類に限らず、魚類や頭足類の場合にも使われている。
宮崎県において、1976(昭和51)年から2009(平成21)年3月までの33年間のストランディングは67件である。最も多い種はハナゴンドウ(15件)で、オガワマッコウ(14件)、ミンククジラ(14件)と続く。1982(昭和57)年には、宮崎市青島海岸に、119頭のカズハゴンドウが集団でストランディングした例がある。骨格展示では、2002年1月に宮崎市青島で発見された体長2mあまりのハナゴンドウが、国立科学博物館に展示されている。
私は、2007(平成19)年9月29日に宮崎市白浜海水浴場で行われた体長2.5メートルのカズハゴンドウ(06年5月漂着)と08(平成20)年5月31日、6月1日の両日、宮崎県東臼杵(ひがしうすき)郡門川町の門川漁港内にある乙島で行われた体長8.7メートルのザトウクジラ(05年2月漂着)の骨格の掘り上げに参加した。
3回目となる今回の取材は、貴重なものとなった。
ユメゴンドウは「夢巨頭」とも言われ、クジラ目ハクジラ亜目マイルカ科ユメゴンドウ属に属する珍しい海棲哺乳類である。英語名は「小さいシャチ(Pygmy Killer Whale)」で、身体的な特徴はシャチに類似している。
1874年、イギリスの動物学者であるジョン・エドワード・グレイによって、初めてユメゴンドウが確認された。その後、ユメゴンドウは発見されず、特徴がよく似ているカズハゴンドウと間違えていたのではないかとも言われていた。1950年ごろまでは、大英博物館が所有している2つの頭蓋骨標本が、ユメゴンドウの存在を知る資料として存在するだけであった。
そのため、これは「夢のクジラではないのか」ということで、ユメゴンドウという和名がついた。
しかし80年後の1952(昭和27)年、和歌山県大地で捕らえられたクジラが、日本の捕鯨学者である山田致知(やまだ・むねさと)によって、54(昭和29)年、ユメゴンドウと確認された。山田は、ユメゴンドウを「珍しいイルカ」 として報告し、「小さいシャチ」(LesserあるいはPygmy Killer Whale)と呼ぶことを提案したのである。
NPO法人宮崎くじら研究会の資料によると、その後日本では、63(昭和38)年に神奈川県相模湾で14頭が、85(昭和60)年には沖縄県今帰仁村で42頭が確認されている。また、国立科学博物館動物研究部脊椎動物研究グループの山田格医学博士監修の「海棲哺乳類情報データベース」によると、2000年以降、ユメゴンドウに関する7件の報告が寄せられている。その中で標本として骨格の掘り上げが予定されているのは、今回の宮崎の2体と、08(平成20)年9月5日に漂着した沖縄県竹富町、今年4月23日に漂着した沖縄県名護市の計4体だけである。学術的には貴重な骨格標本となる。
宮崎の海岸はアカウミガメの産卵地としても知られているが、どうしてクジラがストランディングするのかは、まだ解明されていない。
さて、掘り上げは午前9時前から始まった。
NPO法人宮崎くじら研究会、宮崎大学のサークル「ワイラ」のみなさんが、スコップを手にしてユメゴンドウを埋設したあたりを掘り始めた。近くの小学生や保護者も掘り上げの様子を見学しようということで、約40人が参加した。
私が前回参加した体長8.7メートルのザトウクジラの骨格の掘り上げは、重機を投入したが1日では終わらなかった。今回は体長が2.3メートルということと、場所が砂浜であることから掘り上げは早く進んだ。
しかし、途中から海水が浸み込み、手探りで骨格を確認して取り出す作業となった。頭骨や肩甲骨などの骨が出てくるたびに、子どもたちは歓声を上げていた。約30分で作業は終了し、用意されたシートの上に骨格が並んだ。
その後、宮崎県総合博物館学芸課の末吉豊文学芸員が、掘り出されたユメゴンドウの骨格の説明を行った。ユメゴンドウは、カズハゴンドウに似ており間違いやすいが、頭骨を見ればその違いが分かることなどを分かりやすく説明した。
また、NPO法人宮崎くじら研究会の栗田壽男理事長が、「ここの海岸線はアルファベットのJ字型になっており、クジラが迷い込みやすい状態になっていることもストランディングが多い理由の一つではないでしょうか」と、実際に海岸線を見ながら説明した。説明の詳細については、下記のYouTube動画をご覧いただきたい。
このNPO法人宮崎くじら研究会は、2年前にNPOの認証を受けて活動を行っている。理事長の栗田壽男氏は、長年、宮崎県水産試験場でマグロやカツオを追いかけていた。「クジラ博士」と呼ばれた故・奈須敬二氏の宮崎県内におけるクジラの調査に参加したことで、クジラの世界に入り込み、奈須敬二氏の遺志を継ぎ、現在に至っている。
学習会終了後、骨は部位ごとにまとめられ、用意されたケースに移された。穴の埋め戻し作業は、子どもたちも手伝った。
今回のユメゴンドウの骨格は、宮崎県総合博物館へ移された。骨には砂などが付着しているため、博物館で改めて確認する。骨に肉が残っていた場合は、再度埋却される。確認された骨は水漬けされ、その後、乾燥作業を経て、骨の破損部分の補修が行われる。半年ほど時間をかけて作業が行われる。そして、すべての部位が決定されたあと、博物館の資料としての登録が行われ、骨格展示や博物館講座で活用されることになる。
前述した体長8.7メートルのザトウクジラは上記の作業が行われ、今年3月7日から22日まで宮崎県総合博物館に展示された。泥にまみれていた骨格はきれいになり、流線型の頭骨はものすごい迫力があった。
日本は海洋国家である。しかし、私たちは、海のことや海の生き物についてはあまり知らない。また、どうしてストランディングするのかも解明されていない。そのことに「海のロマン」を感じるのは、私だけだろうか。
私たち大人だけではなく、子どもたちがこのようなクジラ骨格の掘り上げに参加することは、とても大切である。海に関することや生態系のことなどを、大いに学んでほしいものである。【了】
■関連情報
○特定非営利活動法人宮崎くじら研究会
○海棲哺乳類情報データベース
【関連記事】
○漂着ザトウクジラ、4年後宮崎で骨格標本展示
(お詫び)他のクジラ掘り上げに関する記事は、オーマイニュースが閉鎖されたため閲覧できません。
【YouTube動画】
○ユメゴンドウの骨格掘り上げ見学・学習会その1
○ユメゴンドウの骨格掘り上げ見学・学習会その2
○ユメゴンドウの骨格掘り上げ見学・学習会その3
○全国で5例目のザトウクジラの骨格展示始まる―宮崎県総合博物館(2009年3月7日)
○ザトウクジラの骨格掘り上げ学習会前編(2008年5月31日、6月1日)
○ザトウクジラの骨格掘り上げ学習会後編(2008年5月31日、6月1日)
○クジラ掘り上げ見学会(2007年9月29日)
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