PJ: 大谷 憲史
基金訓練はパソコン教室ではない=宮崎
2010年03月11日 07:45 JST

赤色で示された訓練内容は全く実施されなかった。また、黄色で示された訓練は時間数が半減された(訓練カリキュラム表 キャプチャ画像 作成:大谷憲史) 
【PJニュース 2010年3月11日】国が行っている雇用保険を受給できない人を対象とした「緊急人材育成・就職支援基金による職業訓練(以下、基金訓練)」において、その職業訓練が適切に行われていないのではないかと思われる事例が発生した。しかも、私が講師として関わった訓練コースである。私は基金訓練を実施している教育訓練機関の職員ではなく、教育訓練機関から招聘を受けた外部講師である。今回の件を受けて講師を辞めたが、内部告発に近い形で、その実態をまとめた。
その教育訓練機関とは、宮崎市に本社をおく株式会社宮崎コミュニティカレッジ(川越宏樹代表取締役)である。
◇訓練内容が違う
昨年8月3日、株式会社宮崎コミュニティカレッジ(以下、学校)は、中央職業能力開発協会(以下、中央協会)に対して、基金訓練として「職業横断的スキル習得コース・IT活用科」の認定を受けるため、認定様式第1号から第15号までの書類を提出した。認定様式第5号に書かれた「訓練カリキュラム」によると、訓練内容は以下の通りである。科目と時間数のみを紹介する。
・パソコン基礎(66時間)
・パソコン応用(84時間)
・パソコン活用(12時間)
・パソコン検定対策(12時間)
・プレゼンテーション力向上(12時間)
・ビジネスマナー(30時間)
・コミュニケーションスキル向上(12時間)
・リーダーシップ向上(12時間)
訓練は昨年11月から始まったが、当初パソコンの訓練講座を担当していた講師の都合が悪くなり急きょ、12月からは私がピンチヒッターとして、講座を引き継ぐことになった。学校側から講師の打診があった11月中旬、上記の訓練カリキュラムをいただいたが、実際は内容が違っていた。
学校側の意向として、3カ月でMOS(Microsoft Office Specialist)試験のエキスパートレベルまで持っていくということで、「パソコン基礎」終了後の「パソコン応用」では、エキスパートを学習することを計画していた。しかし、学校側は受講生のレベルを考慮し、急きょ、MOSのスペシャリストの内容が新たに追加されることとなったのである。
これによって、訓練カリキュラムで予定されていた「パソコン活用」の内容はすべてを、「プレゼンテーション力向上」も半分の時間がスペシャリストの内容に置き換えられてしまった
「パソコン活用」では、パソコン基礎・応用で学んだ技術を使い、文書作成、データ整理、広告作成等を行う予定にしていた。現場ですぐ使えるような内容だったので私も教材を用意していたが、それらが使われることはなかった。また、現場で使えるプレゼンテーションの技術も時間数が削減されたため、満足のいく実習とはならなかった。
完全にMOSの資格取得のための講座になってしまった。これは職業訓練ではなく、パソコン教室と同じである。違いと言えば、その費用をすべて国が負担していることぐらいだろう。
これで良いのだろうか。
私は学校の担当者に「中央協会に訓練カリキュラムの変更届を出したのか」とたずねたが、問題はないとのことであった。
また、急遽スペシャリストの内容が盛り込まれたため、受講生にテキストを購入させることなく、学校側がテキストを受講生分コピーして配布した。いくら著作権法に例外の10項目があるとはいえ、「行き過ぎではないか」と担当者に質したが、あきれたことに受講生に対してこのことを口外しないようにと伝えていた。
しかし、問題はこれだけではない。
◇セキュリティソフトが入っていない
受講生が使用するノートパソコンすべてに、セキュリティソフトが入っていないのである。これにも驚いた。
セキュリティソフトを導入しない理由を担当者にたずねたところ、「セキュリティソフトを導入するとパソコンが重くなる」とのことである。ウイルスバスターなどのような有料の市販ソフトではなく、キングソフトが出している無料のソフトを導入したところ、パソコンの動きが遅くなったため、外したらしい。
また、担当者は、「訓練用のノートパソコンには個人情報は入っていないので、個人情報が漏洩することはない」とも話していた。だから、セキュリティソフトを導入しなくても良いと言うわけではない。
職業訓練を終えて職に就いた際、必ずと言って良いほどセキュリティの問題は出てくる。また、職場側もパソコン関係の職業訓練を受けてきたと言うことで、その期待も大きいだろう。「すみません。セキュリティに関しては職業訓練を受けていません」と答えたら、仕事をなくしてしまうかも知れない。
このような学校側の対応に、このまま講師を辞めようと思ったが、講座も中盤に差し掛かっていたこともあり、また、年末を控えて大切な収入源の一つをなくすことにもなりかねないので、講座を続けることにした。【つづく】
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