PJ: 林田 力
天安沈没事件調査報告を市民団体が批判=韓国
2010年05月25日 06:37 JST
【PJニュース 2010年5月25日】韓国海軍哨戒艦「天安(チョンアン)」沈没事件について、韓国の民軍合同調査団は5月20日、朝鮮民主主義人民共和国の魚雷攻撃を原因とする調査報告を発表した。これに対し、韓国の市民団体は同日、記者会見し、調査結果を信用できないとする声明を連名で発表した。声明に参加した団体はキリスト教社会宣教連帯会議、仏教平和連帯、全国貧民連合、全国女性連帯、青年連帯、カトリック農民会などである。
声明では調査報告を信用できない理由として大きく3点を挙げる。
第1に証拠への疑問である。北朝鮮製魚雷のスクリュー破片が沈没した海域から回収されたが、潮の流れによって北朝鮮側の海域から漂着しうるものである。破片が激しく腐食している点は今回の沈没との関係性を否定する方向に働き、軍内部でも慎重論が提起されたとする。
第2に軍の調査過程と方向性への疑問である。軍は沈没事件の真相を明らかにする核心的で基本的な資料を公開しなかった。レーダー映像や航跡記録・交信記録、生存者の陳述書などである。これら基礎的な資料さえ公開しない不透明な調査結果発表は信用できないとする。
また、軍は当初から座礁などの他の可能性の検討を避け、外部からの攻撃を立証することに没頭したとする。提起される数多くの疑惑と問題提起に対して、説得力ある答弁も反論もしていない。むしろ、問題提起する人らを告発した。このような行為は公正で客観的な調査に反する。以上より軍が北朝鮮の攻撃という結論を予め下しておき、それに合わせて報告をまとめたと主張する。
第3に調査主体への疑問である。軍は事件発生の責任者であり、事件の隠蔽・歪曲の責任者である。船体に対する証拠隠滅疑惑まで提起されている。その軍が合同調査団の中心的な存在として調査を主導することは調査の公正性を決定的に破壊する。調査対象者は、自身の責任を最小化する方向に調査を進める可能性が高いためである。
その上で声明は北朝鮮を犯人に仕立て上げることによる軍と李明博政権の利益を指摘する。軍には自身に向けられている国民の憤怒をそらして自身の責任を最小化する動機がある。李明博政権には「北風」を利用して統一地方選挙に有利にし、朝鮮半島の緊張激化によって「反北守旧勢力」の既得権を維持しようとする動機がある。
結論として声明は、レーダー映像などの核心的な資料を公開した上で、国民が信頼することのできる主体による全面的再調査を要求する。
6月2日に行われる統一地方選挙では盧風(盧武玄の風)と呼ばれる革新勢力の巻き返しが注目されている。この盧風に対抗するために保守勢力は天安沈没事件を最大限に政治的に利用するものと推測される。声明は、その出鼻をくじくものである。合同調査団の報告を鵜呑みにして北朝鮮バッシングに走る日本社会と比べると、声明には韓国市民社会の成熟と多様性が感じられる。【了】
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