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PJ: 田中 大也

児童ポルノ犯罪はなぜ「増える」のか(完) 共有ソフト網への摘発の強化も増加の要因
2011年03月04日 08:03 JST

■共有ソフト網への摘発強化が件数の増加を生む二つの「理由」とは

「ウィニー」などの、ファイル共有ソフトへの対応が強化されたことも、件数増加の要因の一つだと指摘することができる。

数年前までは、ネット上の「児童ポルノ」対策と言えば、サイトや画像掲示板に貼りつけられた画像や映像に対するものが主流だったわけだが、近年、捜査機関の注力化により、共有ソフト網による画像や映像のやり取りに関しても、頻繁に摘発が行われるようになってきている。今まで、あまり手が付けられていなかった媒体にも捜査が及んできている以上、従来よりも件数が増加するのは当たり前の事だと言えるし、この要因によって件数が増えることは、対処が進んだという意味で、プラスとして考えることができる。

また、共有ソフト網独自の性質が「件数」増加に繋がっているとも考えることができる。インターネット上の掲示板は、画像を貼りつける「送り手」と、それを見る「受け手」の立場がしっかりと分かれているが、共有ソフト網の場合、「共有」と言われるほどに、「送り手」と「受け手」の立場は曖昧なものになりやすいとも考えられる上、ウィルス等々の問題によって、保持していた画像や映像が「流出」する可能性も高いという性質がある。

画像の「受信」だけではなく「やり取り」を行うソフトなだけに、送り手≒受け手になりやすい状況があると言えるのだが、そのために、個々の利用者が画像の送信者になる可能性が高く、ソフトが有するネットワークが摘発された場合、送り手を処罰する現行の児童ポルノ禁止法における検挙者、検挙件数の数が、「受け手犯罪者化」に近い形で増加するということにもなり得る。

サイトや掲示板摘発よりも、共有ソフト網摘発の方が、むしろ件数は多く計上されやすい条件があるため、注力化によって、件数が加速度的に増大するということにもなる。「性質」の違いと言えるもので、送信が多くなる分、人権的観点からはまずい部分が大きいと解釈することも可能なのかも知れないが、いずれにせよ、上記二つの理由から、共有ソフト網の摘発が進むことで件数が増加するのは必然的な結果でしかなく、実態の悪化を示すものではないと言える。

■件数の急増によって生まれる「作られた脅威」に対処するには

年数が経過すればするほど、「認定」された「児童ポルノリスト」の総数が増加し、児童に対する人権侵害とは関係なく、件数だけがどんどん増えていくシステム、重点化による一時的な摘発数増加の影響が永続する特性、男子や乳幼児の画像や映像の多くを「児童ポルノ」にしてしまい得る、常識とはかけ離れた広範な基準や、年齢特定のできなかった画像を「見た目」で有罪にしてしまえる「鑑定」。

児童ポルノの検挙件数と近年の件数急増は、こうした独自性の高い、危険な仕組みによって構築された「作られた脅威」と言える。

多くの部分が、他の犯罪とは異なり、経年比較どころか、一年に限った数値でさえ、曖昧で恣意的な部分が含まれ過ぎていて、実情を示しているとは言い難く、むしろ、取り締まる側の「主張」に近い部分すら多いのが現状だ。

こうした要素に支えられた件数の増加が、事態の深刻さを示すものではないことは当然のことだが、「作られた脅威」によって振り回されないような状況を作り、実効性のある統計データの獲得と対処のためには、問題性のある要素の是正が必要不可欠だろう。

すなわち、恣意的な要因が絡まず、穏当な男子や子供の画像が児童ポルノとされないためには、「鑑定」と、曖昧な「3号ポルノ」基準の撤廃など「定義」そのものの根本的な見直し、「認定」の永久増加を防ぐために、被写体が十八歳以上になっているものに関する「児童に対する人権侵害」の枠組みからの除外(普遍的な人権侵害として、送り手に罰則を加えることはあり得るだろう)というような見直しが、「作られた脅威」をコントロールするには重要になってくると考えることができるのだ。

また、見直しを進めていく過程で、統計にぶれや恣意的要素介入の余地が少なくなっていけば、当然、有意なデータの蓄積と分析が可能になってくる。そこから導き出される結論は、恐らく現状よりもずっと、「本当の脅威」に対しても有効に働くだろう。【了】

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