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PJ: 田中 大也

またも漫画やゲームが「悪者」に!? 際限なく繰り返される「創作物悪玉論」の愚かしさと危険性
2011年03月10日 07:05 JST

【PJニュース 2011年3月11日】
■熊本の児童殺害、死体遺棄事件報道で、漫画やゲームが「槍玉」に!?

先日、熊本で発生した児童殺傷・死体遺棄事件は、その悪質性もあり、容疑者の大学生が逮捕されてからも、連日大きくニュースで扱われている。

だが、この事件の「犯人像」を巡る報道において、看過できない深刻な流れが生まれつつもある。具体的に言えば、「容疑者の自宅から、少女をモデルにしたキャラの性行為を描写した漫画が押収された」、「容疑者は事件後にオンラインゲームをしていた」といった感じで、一部の漫画やゲームをバッシングするかのような報道がなされているのだ。

漫画が押収されたことやゲームをしていたことは事実だろうと考えることができるわけだが、通常、「犯人がサスペンスドラマを見ていた」、「ミステリー小説を読んでいた」、さらに言えば「常に水を飲んでいた」などと「問題視」される報道が発生すること自体考え辛いことである以上、一連の報道は、特定ジャンルの漫画やオンラインゲームといった分野を槍玉に上げる傾向の強いものだと言わざるを得ないだろう。

しかし、漫画やゲーム、特定のメディアが犯罪を誘発するという因果関係、いわゆる「メディア悪影響論」は、現代では科学的に否定されており、漫画やゲーム等のメディアによって犯罪が増加していくというのは、錯覚に過ぎない。

こうした事件が発生すると、しばしば報道は漫画やゲーム、アニメ、ポルノ的な画像や映像などを悪者扱いしてくることが多いが、根拠のない「言いがかり」でしかないということにもなる。

■「不可避の規制」と「超連帯責任」を招く根拠なきバッシングは止めるべき

詰まるところ、旧来から延々と続いている、特定の物品やジャンルに対するバッシングは、「それっぽい」ものならばいいという、根拠なく叩いても文句が出ないところに対する「弱いものいじめ」でしかない。

そして、全体的に見ればどれほど小さな確率であろうと、何かを所有する人間によって事件は起こされ得るわけで、事件の発生と、無関係な物品の所有を強引に関連づけ、バッシングを続けた結果にあるのは、絶対に避けることのできない「不可避の規制」であり、一人の起こした事件の結果、何万、何十万、何百万という数の人々が、規制を受けるという形で不利益を被る「超連帯責任」とでも言うべき構図だ。

本来、接点がないところでは責任の共有など起こり得ないことを考えると、報道や政治の力によって、全体主義社会よりもひどい連座制が、報道や政治の力で行われてしまっているという現状がある。そして、「根拠のない言いがかり」である以上、バッシングに従って厳しい制約を設けたとしても、全く効果は期待できないということにもなる。

秋葉原での通り魔事件の結果、ダガーナイフや両刃のナイフの所持が禁止され、所持者全てが「犯罪者予備軍」にされてしまったことは記憶に新しいが、「それっぽい」ものを規制することによって、分かりやすく政治的実績を得ようという風潮から、様々なジャンルの物品や作品を所持しているファンたちは、言いがかりのような規制の恐怖に晒されているのだ。

こうしたバッシングの標的にされないためには、叩きづらいと思わせるだけの社会的認知性や政治的発言権などの様々な「力」をジャンルごとに有しなければならないが、全ての標的となり得るジャンルがそうした「力」を持つことなど現実的には無理な話でしかなく、また、「ロリ系」漫画や「凌辱系」漫画など細分化すれば、大きなジャンルも「弱く」、「叩きやすい」存在になってしまう。

となれば、どうにかして報道に「無根拠なバッシング」を止めてもらい、政治の世界でも何かに対する規制が、すなわち、国民や市民の権利の制限が、実績になるという現状を改めなければまずいということにもなる。特にマスメディア、報道の分野に関して言えば、「詳細な犯罪報道が事件を助長する」的に、言論や報道の自由の部分を叩かれ、統制されかねない立場にいるだけに、「他人事」でもないはずだ。

「漫画が、ゲームが悪い!?」などという恣意的なバッシングは、確かに「分かりやすく、絵になりやすい」構図がある。しかし、そうした「作り話」は、全国民、市民に不利益をもたらしかねないばかりか、全く効果が見込めないという点で、実情としては無益有害なものでしかない。事件がある度に特定のジャンルを叩くのではなく、過去の統計などから、冷静に分析していくことこそが、実情把握のためには必要なのではないだろうか。【了】

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