PJ: 高橋 清隆
沖縄返還に伴う日米密約文書を公開請求 ジャーナリスト、弁護士ら95人が外務省・財務省に
2008年09月03日 10:14 JST

手続きのため外務省から財務省へ向かう請求者と代理人(撮影:高橋清隆、9月2日) 
1972年の沖縄返還に伴う日米の秘密合意文書の公開請求が2日午後、外務省と財務省で行われた。米国の公文書や当時の外務省担当者の証言により密約の内容が明かされる中で政府は一貫してその存在を否定しており、対応が注目される。
秘密文書の公開を請求したのは、ジャーナリストの原寿雄さんや筑紫哲也さん、憲法学者で東大名誉教授の奥平康弘さんら63人。代理人として32人の弁護士が付き、外務省と財務省の窓口で手続きを行った。
請求されたのは、?1971年12月2日付け柏木雄介大蔵省財務官とアンソニー・ジューリック米国財務省特別補佐官との「秘密合意議事録」?1971年6月12日付け吉野文六外務省アメリカ局長とスナイダー駐日アメリカ公使との「400万ドル(軍用地復元補償)に関する秘密合意書簡」?1971年6月11日付け吉野文六外務省アメリカ局長とスナイダー駐日アメリカ公使との「1600万ドル在沖縄VOA施設の海外移転費用の秘密合意書簡」。
これら3点はすでに琉球大の我部政明教授が1998年から2000年にかけ米国立公文書館で秘密指定を解除された英文の文書を入手している。今回はこの米側文書のコピーを付けての異例の請求である。
沖縄返還協定では対米補償費として3億2000万ドルが記載されているが、米側から入手した大蔵省財務官との覚書では、日本がさらに2億ドルの補償を約束している。結果として米側は1億9000万ドル分の補償を得たことが別の文書に記されている。
3億2000万ドルの内訳には核撤去費として7000万ドルが計上されているが、沖縄返還後に米大使館が作成した報告書では、核撤去に使ったのは500万ドルにすぎない。代わりに、返還される軍用地の復元補償費400万ドルやプロパガンダ放送VOA(ボイス・オブ・アメリカ)の移転費1600万ドルなどを日本が秘密裏に肩代わりしたことが、外務省アメリカ局長とのやり取りを記した米側文書で明かされている。
軍用地復元補償の400万ドルをめぐっては、この密約を示す極秘電文を外務省事務官から入手して報じた毎日新聞の西山太吉記者が逮捕され、懲役4月、執行猶予1年の有罪が確定している。
請求者の共同代表を務める原さんは今回の公開請求について、「新しい知る権利の闘いの仕方でもあるし、ジャーナリストである西山さんの名誉を守る闘いいでもある」と位置づける。
請求人の一人でもある西山元記者は「密約について完ぺきな証拠が出尽くしているのに、行政は否定し、司法が判断を回避している。この流れをぶち破る必要がある。日本とアメリカの代表者のイニシャルの付いた証拠を俎上(そじょう)に載せ、国民公開の論議を巻き起こすのが狙い」と話す。
行政は請求があれば、30日以内に開示(全面、部分)か不開示(不存在含む)を回答しなければならない。同じく共同代表者の奥平教授は「出ないだろう」としながらも、「ここまで情報が明らかにされながら、今さら『不存在』というのがどういう理由でできるか興味がある。『不存在』とされたら、追及を緩めてはならない」と話し、訴訟も辞さない構えだ。
開示請求直前の午後1時、西山元記者の上告棄却の報が入った。西山さんは違法な起訴で名誉を傷つけられたとして、国に損害賠償と謝罪を求めていた。これについて西山さんは「極めて政治的な判決。判決を急いだのは、この公開請求のニュース価値をつぶすためと、目まぐるしい政局をにらんでのことだろう。政権が変わって3つの文書の存在を認めたら、歴代政権の責任問題に発展し、大変なことになるから」と分析する。
政権基盤が弱まる中で真相封じに躍起の政府。屈辱的な日米関係に対し、国民の関心がどこまで高まるかが問われている。【了】
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