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PJ: 高橋 清隆

ニュース研究(1) 振り込め詐欺報道の真意
2008年10月27日 07:57 JST

マスメディアが情報によって民衆を支配する装置であることは、賢明な読者には説明不要だろう。全国に一斉に報じられるニュースなどすべて宣伝であることは拙著『偽装報道を見抜け!−−世論を誘導するマスメディアの本質』(ナビ出版)でも説明した。毎日流されるニュースの中で、無知なわたしにもその意図が見抜ける簡単な事例を、気が向いたときに示していきたい。

 10月に入り、振り込め詐欺に関するニュースが大々的に流されている。連休直前の10日にはNHKの『ニュース7』や『ニュースウオッチ9』が、お年寄りが被害に遭う手口をいずれも10分以上かけ大々的に報じた。「オレオレ詐欺」に始まる振り込め詐欺事件は平成16年ごろから報じられるようになったが、その本当の狙いは何だろう。管見では、暴動の発生に備えた厳戒体制を敷くための口実づくりというのがその答えである。

ATM一斉警戒と株価暴落
 連休明けの15日には、全国8万カ所余りの現金自動預払機(ATM)に警察官5万8000人を配備する警戒態勢を取った。都内では1万2000カ所あるすべてのATに警官を配備した。わたしの街にあるいずれの銀行とATMの前にも警官が終日立ち、物々しさが漂っていた。急増する振り込め詐欺の被害を食い止めるためと報じられたが、本当だろうか。

 警察庁のホームページによれば、「振り込め詐欺」とはオレオレ詐欺(恐喝)事件と架空請求詐欺(恐喝)事件、融資保証金詐欺、還付金詐欺の総称。平成19年1〜8月の認知件数の合計1万906件に対し、20年度の同期比は1万5301件。「急増する」との表現は一見正しそうに見えるが、データがまとまっている直近の8月は1540件で、昨年同月の1684件より減っている。15日の一斉警戒で見つかった振り込め詐欺は、全国でわずか3件の計670万円だった。「抑止効果があった」と片付けられるだろうか。

 この間、世界の金融市場は予断を許さない危機的な状況にあった。16日の東証平均株価は前日終値比1098円02銭安の8458銭まで下げた。この下落率11.41%は1987年の「ブラックマンデー」に次ぎ、1953年の「スターリン暴落」を上回る。もちろん、これは世界的な株価下落の一片である。発端である米国は前日の14日に急落し、市場が混乱していた。鉱工業生産指数は前月比2.8%低下し、34年ぶりに悪化。失業者数は16万人と発表され、予想を超えて雇用が悪化していることが明らかになった。少なくとも今後半年間はマイナス成長になると、ゴールドマンサックスが予測している。アジア、欧州市場の主要株価も値下げ一色だった。一足早い欧米での金融不安を見て、わが国での混乱を警戒したと解釈すべきではないだろうか。

世界でくすぶる取り付け騒ぎ
 米国では5大投資銀行のうち3行はつぶれ、残る2行は投資銀行を廃業した。住宅市況の不況によって不動産担保債券の価値が下がり、それ以外の各種融資債権やデリバティブにも下落が波及。債券の取引に金融機関相互が疑心暗鬼になり、経済の血液であるお金の流れが悪化している。

 ドイツでは9月末、取り付け騒ぎが起きかけた。大手のハイポ不動産銀行が、アイルランドにある傘下の不動産銀行が資金調達不能になったため本体も破たんしかけた。ドイツ政府は融資体制を組もうとしたがほかの銀行が協力したがらず、失敗したからだ。国民の一部でパニックが起きたが、政府が預金の全額保証を発表し、難を逃れた。

 イタリア、英国、ベルギー、アイスランドなどでも、大手銀行が資金調達に行き詰まった。取り付け騒ぎが広がったため、政府が緊急支援に乗り出した。アイスランドは人口30万人の国だが、インフレと為替下落、金融取り付け騒ぎなどが起きている。国内大手銀行が英国などほかのEU諸国で事業を積極的に拡大した結果、1銀行の資産が自国のGDPの数倍まで拡大したことが背景にある。他の欧米諸国政府に緊急融資を求めたが断られ、破たん寸前だ。

 米国の金融危機は、同国内の一般企業と地方政府の資金調達を難しくしている。自治体の財政破たんと大企業の大量倒産が起きると報じている新聞もある。銀行が手形(CP)を引き受けたがらなくなっているためである。すでに3月、米国内で食料や石油などの備蓄を始めた市民と政府の間で銃撃戦が起きていると『オルタナティブ通信』が伝えている。わたしはこれを読んだとき信じられなかったが、現実味を増している。米国ではマイケル・ムーア監督の『ボーリング・フォー・コロンバイン』をきっかけにここ数年、銃規制が進んだ。

 ドルの暴落は、世界の動向にも深刻な影響を与えている。中東諸国のほとんどは石油の決済通貨としてドルを使用してきたが、昨年、イランが石油の決済の80%をユーロ建てに変更したと伝えられる。このまま下落が続けば、サウジアラビアなどペッグ制(ドルへの為替連動)を敷いている国も離れていくだろう。わが国や中国のように米国債券を大量に持つ国は要注意だ。米国内を見た場合、手形を引き受ける金融機関が見つからなくなれば、米政府(FRBと財務省)が引き受けることになる。しかし、最後の貸し手である政府の不良債権比率が高まって債務不履行に陥れば、ドルが崩壊する。

 中国はドルに対し疑似ペッグ制を取っているが、いざとなれば売り逃げることができる。中国の輸出はすでに対米依存から脱却し、独立国として立派に振る舞う。100兆円を超える米債を持ったわが国は、列島の北から南まで米軍基地が置かれ、占領状態が続いている。「輸出産業の保護」を口実に円高時にドルを買い込んできたが、売れないことは分かっていたはずである。ドルが崩壊すれば、わが国は米国と心中するしかない。

仕組まれた投機経済と破たん
 この危機的な局面は、いつ目の前に現れても不思議ではない。24日現在、株価は下がったままで、東証は7600円台と、バブル崩壊以降の最安値に迫る勢い。食料「偽装」事件によって食べ物は確実に品薄になっており、昨年の発砲事件、今年の通り魔事件によって抗議に使う武器もない。

 そもそも、この金融不安は、経済学に疎い米首脳の失策から来たものだろうか。わたしにはとてもそう思えない。今回の危機は膨張した2京2000兆円の投機金融が6600兆円の実体経済を機能不全にしたものだが、その原因は不動産融資の証券化や有価証券を担保に再投資できるレバレッジ投資にある。不動産を証券化することによって貸し倒れリスクは融資した銀行でなく投資家が引き受けることになり、自己資本比率規制のたがが外れた。レバレッジ投資により、ウォール街では元本の30倍位の投資が横行したといわれるが、証券が下がれば含み損も一気に拡大する。米国はグラス・スティーガル法でこうした行為をできないようにしてきたが、1990年代後半の規制緩和で急拡大した。世界恐慌を招いた1930年代と同じことをしている。

 アイスランドの金融破たんは、EU拡大に伴って融資事業が拡大していった結果である。EUは自然に拡大したものではない。作為性を感じる。中国は上海総合指数や香港ハンセン指数で4%以上も値を下げたものの、なお9%台の成長を見込み、米国を助ける大きな存在となり得る。それなのに、台湾にパトリオット迎撃ミサイルなど65億ドルもの兵器売却を発表し、救済の芽を摘んでいる。はたから見ると、わざとやっているとしか思えない。

 アルバート・ゴアやデービッド・ロックフェラーなど国際金融資本家は地球上の人口を現在の10分の1に減らす発言をしているが、そのための戦略と見れば、すべてすっきりする。

 株価の低迷と並行して、振り込め詐欺報道も止まらない。現金を引き出したとされる男の顔写真を公開したり、前月の詐欺事件の逮捕をマスコミは一生懸命宣伝させられている。とはいえ、連休明けの米国での株価下落に連動した預金封鎖をひとまず回避できたことに、わが国の統治担当者は胸をなで下ろしたことだろう。同時に、ニュースを見て「詐欺はけしからん」と怒りながら、何事もなかったように生活を送る日本人大衆を笑っているはずである。最大の詐欺は自分たちなのに。【了】

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