PJ: 高橋 清隆
ニュース研究(3) 大麻所持報道の真意
2008年12月04日 08:32 JST
一般人による大麻事件のニュースがやかましい。力士や芸能人に加え、名門大学の学生や歯科医などが所持の疑いで続々と逮捕され、国民を驚かせた。学生はキャンパスで先輩後輩やサークルを通じて種子を入手し、ベランダで栽培していたという。ほかに、海外で種子を手に入れたり、ネットで購入したりといった例が伝えられている。
ずばり、大麻事件報道の本当の狙いは、農業栽培目的以外での種子一般の売買を規制する世論を喚起することではないか。
種の売買糾弾する不自然な特集
大麻をめぐる検挙は平成20年上半期1686件で、昨年を141件上回る。マスコミはこの点を挙げ、深刻さを強調する。しかし、この5、6年を見ると、伸び率に変化はない。検挙された人は報道とは違い、暴力団関係者の比率が微増傾向にある。薬物事犯による総検挙数は、横ばいか減少傾向にある。不自然な報道は少年法や道交法の改正のときと同様、新たな規制が企てられていることを物語る。
マスメディアの特集は正直だ。3日のNHK総合『クローズアップ現代』は自宅で大麻を栽培していたとする若者を紹介した後で、次のナレーションを付けた。「大麻草も、観賞用としての種子の売買は禁止されていない」。
11月14日の毎日新聞は「広がる大麻汚染−−種子の所持 規制に穴」と題する特集記事を組んだ。ここでも同様のくだりがあった。「背景にあるのは法規制の『限界』だ。同法(大麻取締法)は栽培を禁じているが、種の所持には罰則規定がなく、飼料用などとしては売られている」。
種子の自由な売買を禁じたい意図が読み取れる。もちろん、彼らの狙いは大麻の独占ではなく、食べ物の独占にある。
世界の農家を食い物にする種子企業
農業分野では巨大企業による種子の独占が進む。米国のモンサント社は穀物メジャーのカーギルの種子部門をはじめ、種子企業を積極的に買収してきた。05年には野菜・果物の種子最大手セミニス社を買収。セミニスは3500以上の種子を販売し、トマトやキュウリなどで大きなシェアを持っていた。
バイオ企業が種子事業の買収に力を入れ始めたのは、遺伝子組み換え技術によって生物に特許をかけることができるようになったからである。種子を握れば、農薬や肥料、機械なども指導して売れる立場になる。遺伝子組み換え種子の90%を所有するモンサント社は種子を購入する農家に、翌年の栽培のための種子保存や他社の除草剤使用を放棄することをうたった契約書への署名を迫る。同社はどんな植物も殺してしまう農薬・除草剤「ラウンドアップ」を普及させる一方で、これに耐える新種を開発してセットで売る。毎年買わせるため一代で終える種子も開発し、トウモロコシでは95%も普及した。
かつて大概の国では穀物を中心に公的機関による育種が一般的だったが、1961年に締結された「植物新品種保護に関する国際条約(UPOV)」によって民間企業の品種開発投資が活発になった。わが国でも86年の主要農作物種子法改正によって、民間企業の参入が認められた。
種子開発業者の権利は強化される一方で、遺伝子や細胞にまで特許をかける方向で進んでいる。これは品種改良に必要な生物資源全般に制約が加わることを意味する。知的所有権や特許でガードされた世界企業は農民から種子を取り上げ、世界の人々を無所有の奴隷にしたいのだろう。そうなれば、少しでも食べ物を口にするためには従うしかなく、もはや家畜同然である。
正義を装い、食べ物の元を差し出す
先の『クローズアップ現代』には、「夜回り先生」こと水谷修花園大客員教授が出演して若者の心の闇を訴えた。「秋葉原の事件もあったように、将来が見えない今の状況では、若者がこうした薬物に頼りたがるのも無理はありません。親御さんはできるだけ子供さんの部屋を訪ね、疑ってかかること。ベランダを見たり、臭いを確認する。お香をたいてたら、まず大麻をやっています」。
しかし、なぜ大学に進める階層の若者が将来を悲観しなければならないのか。マスコミは「無理筋」の事件に関して、逮捕を弁護しようとする癖がある。毎日新聞の特集も、野田正彰関西学院大教授が擁護するコメントを寄せていた。「社会や他者に無関心で人生の目標も見いだせないままの若者が、生きている実感や感覚的な刺激を求めて大麻に走っているのではないか」。
将来有望な大学生がつまらない趣味で人生を棒に振るというのは、にわかに信じがたい。捕まった外国人力士が自ら会見を開いて無実を釈明したが、その声は空言に聞こえなかった。ニュースはいつも、警察発表に基づいている。真相は分からないが、これらの意外な事件報道が大麻問題を注目させる効果があったことは確かだ。それによって、種子規制の新法も整えやすくなる。
今、巨大民間企業は種子を農民からだけでなく、国民から奪おうとしている。マスコミは正義を装って「大麻汚染」を連呼し、食べ物の元も悪意ある支配者にそっくり差し出そうとしている。【了】
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