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PJ: 高橋 清隆

公共事業が日本を救う!=藤井聡教授が日本経済復活の会で訴える
2010年12月21日 07:26 JST


データを使い、公共事業の意義を説明する藤井教授(撮影:高橋清隆、2010年12月16日) 

【PJニュース 2010年12月21日】『公共事業が日本を救う』(文春新書)で「公共事業=悪」の社会通念を両断し物議を醸す京都大学の藤井聡(ふじい・さとし)教授が16日夜、日本経済復活の会(小野盛司会長)で講演し、国を守るため建設国債による徹底的な公共投資を訴えた。

バブル崩壊後、20年来のデフレが続くわが国では、少子化と「国の借金」を前に予算は縮小するばかり。公共事業こそ、国を疲弊させた主原因と思われているだけに、道路やダムを造るための国債発行は禁忌されている。

冒頭、藤井氏は「日本の公共投資が諸外国に比べ異常に高い」との通念がうそであることをグラフで示した。五十嵐敬喜・小川明雄両氏による『道路をどうするか』(岩波書店)に「公的固定資産形成(対GDP比)」が掲載されている。ドイツや英国、イタリア、カナダ、フランス、米国に比べ日本は突出している。

しかし、藤井氏は基となる統計が違うことを指摘する。諸外国はOECDの「ナショナル・アカウンツ」の数字を引用する一方で、日本だけが「国民経済計算」という国内資料を用いているのだ。しかも、他国が2007年の資料なのに、日本だけが2004年の資料だ。

藤井氏がすべて「ナショナル・アカウンツ」2007年版の数字で作成してみたところ、先進国の中で突出しているわけではなく、フランスやカナダよりも低いのが分かったという。「この誤った認識が、公共事業見直し論の根拠になった」と告発した。

日本は狭い国土に道路が異様に多いと言われてきた。そこで道路の整備水準を先進各国と比較する。前掲の『道路をどうするか』では「可住面積あたりの道路延長」が比較されており、日本は突出して高い。これも詐術だと藤井氏は指摘する。

「山地が多く可住地の少ない日本で、可住面積当たりの道路が長いのは当たり前です。そもそも、道路は可住地同士をつなぐもの。だから、可住地面積当たりで評価すること自体が、ナンセンス」と看破した。

利用者数(車両台数)当たりの道路延長で比較すると、日本は多いわけでない。高速道路では先進国最下位であることを示した。

規格の高さ別に各国の道路網を比較すると、日本の道路網の貧困さが如実に表れる。アウトバーンがクモの巣のように張り巡らされたドイツと比べると、まるでのっぺらぼうのようだ。

「人間は交流が活力の源です。離れた場所の人たちと食事をしたり、会議をしたり、学会に出たりすることで、新しいアイディアや希望が生まれます。交通インフラはその国民の活力を左右するんです」

喫緊の課題として、藤井氏は橋の老朽化対策を挙げる。米国では1980年代に全国の都市で重要な橋が落ち、多くの人命が失われた。1920年代に造られたものだ。世論の高まりによって橋梁(きょうりょう)補修・建設費が2.25倍に増額されたが、日本は手をこまねく。1950年代に橋梁の建設ラッシュが始まった日本は、2010年ごろから崩落が始まると予測される。

「橋梁予算を年々削っている日本は、『死んでも仕方ない』と言っているのと同じ。メンテナンスに必要な予算は80兆円程度と試算されるが、巨大な内需が存在するということでもあります」と、インフラ改修の必要性を訴えた。

また、防災対策としての耐震化やダム建設などを主張した。「地震は日本国家のリアルな危機。ポルトガルの凋落はリスボン大地震がきっかけでした。首都直下型地震の予想被害は112兆円ですが、20兆円の対策で被害が約100兆円削減できます」と強調する。

「川に囲まれ土地の低い東京は、本来住む所ではない。だから治水が必要。大きな水害が起きれば、経済損失は30〜70兆円に及ぶ。だから首都移転の話もあった。スーパー堤防は街と一体になった、絶対に壊れない堤防。予算があれば早く造れるのに造らない。本当に不思議な国」と首を傾げた。

「やらなければならない公共事業は山ほどある。できることをするのは人として当たり前のこと」と述べ、デフレ下の今、建設国債発行による徹底的な公共事業の必要性を主張。デフレを脱却できたら、公共投資を平常水準に戻し、必要に応じて増税による財政再建を図ればいいと説明した。

「切り替えは金利とデフレーターを見ながら大胆にやればいい」と述べ、過去30年間の政府資本形成と財政出動の一覧を見せた。「小渕内閣では財政出動によって税収が増え、財政が改善した。小泉構造改革で悪化したが、外国の景気が良く、国民はだまされた」

その上で藤井氏は、財政出動で日本を救える数字的根拠を示す。90年代に財政出動によるデフレ対策を取らなかったことによる経済損失は、およそ4000兆円と試算した。これは経済成長率について世界平均値を適用したもので、仮に3分の1で計算しても約2000兆円との結果が出た。「借金が増える」と自ら貧乏に突進するわが国の、何とばかげたことか。

大学の授業では、よく学生たちに確認の挙手を求めるという。その際、「マスコミの主張と逆の方が、大抵正しいよ」と助言するという。明快な現実である。

藤井氏は工学部の土木工学出身で、公共政策の観点から社会科学の分野に入ってきた。彼の経済理論の明晰(めいせき)さが目立つのは、ほとんどの経済学者が政府のデフレ政策に迎合していることも一因だ。講演の後、藤井氏はこっそりとつぶやいた。

「何で土木の人間が、世論とけんかしなきゃいけないのか」

大学もマスコミも曲学阿世の徒に席巻された、わが国の悲しい現実がある。【了】

■関連情報
『公共事業が日本を救う』藤井聡(文春新書)

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