PJ: 高橋 清隆
『実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠』の真相について 経済アナリストの菊池英博氏に聞く(3)
2007年09月29日 07:53 JST

文京学院大学でインタビューに答える菊池英博氏(撮影:高橋清隆、7月2日) 
(2)からのつづき。
−郵政民営化による破滅的なシナリオは、完全民営化の2017年でなく、今年10月から始まる可能性もあるのですか。
「理屈上、あり得る。国債の書き換えが順調に進むか、新規国債の引き受けが進むかどうか、確証はない。今まで国債を買っていた資金が金利の高い外国の債券の購入に充てられるようになると、日本の国債は売れなくなる。そして金利が上がる」
「今、郵政公社全体で368兆円の資金があり、266兆円を国債の購入に充てている。民営化で200兆円ほどの資金が日本から海外に出ていくと予想され、国債が売れなくなれば、長期金利が上昇し、大量の国債を保有している日本の大手銀行では多額の国債評価損が発生し、大規模な金融不安が起こる。3大メガバンクは合計で54兆円の国債を抱えている。大手銀行はBIS(国際決済銀行)の自己資本比率規制で自己資本を8%以上要求されているから、国債が暴落すれば、評価損だけで自己資本がかなり目減りし、貸し出しを圧縮しなくてはならない。ここで大規模な『貸しはがし』が起こる。長期金利わずか1%の上昇だけで、国内銀行全体で43兆円の信用収縮(貸し渋り)が起きると理論値だけでは予想される」
「特に地方は深刻だ。今すでに、公共投資の削減と地方交付税の縮小でお金が流れなくなっている。国内総生産(GDP)で見ると、大都市でプラス成長だが、地方はほとんどマイナス成長である。地方の民間銀行等は、いつつぶれるか分からなくて不安な状況だ。メガバンクに持っていこうか、郵便局に持っていこうかと。そこに『ゆうちょ銀行』が出てくれば、民営化されても政府が株式を100%持っているので、超優良銀行の誕生ということになり、地方銀行や信用金庫などは業態不振になって、半分はなくなるだろう」
−「金融庁がUFJ銀行を意図的に破たんさせようとした」のは、最初から3メガ化をもくろんだのか、売り飛ばしを狙ったのか。
「恐らく、両方あるのではないか。これは竹中氏の考えでしょう。『日本は銀行が多すぎる』と言っていたから。しかし、わたしが書いたように、日本はオーバーバンキング(銀行過剰)ではない。むしろ銀行等の少なすぎることが不安定要因になっている」
「UFJ銀行が狙われたのは、不動産関連の融資が多いため、DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)と呼ばれる手法や減損会計を使って財務内容を次々に悪くすることができたから。DCF方式では5年後の貸出債権の回収具合を判断するから、不動産価格が下がっているときは、そのまま下がるとみる。年2%下がっていたとすれば、5年後にはマイナス12〜13%になり、『これでは返せない、不良債権だ』ということになる」
「UFJは2003年の決算のとき8000億円の業務純益を上げていた。そこに金融庁が1兆2000億円の貸倒引当金を積ませたために、4000億円の赤字にさせられた。当時のUFJは信用不安を起こしているわけでないし、預金が減っているわけでもない。株も売られていない。一生懸命つぶそうとしたのは金融庁である。UFJは『行政リスク』を回避するため、東京三菱銀行に逃げ込んだ。【つづく】
■関連情報
【書評】『実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠・このままでは日本の経済システムが崩壊する−−ゆうちょ銀行、かんぽ生命が引き金を引く−−』(菊池英博著、ダイヤモンド社 2007.6)
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